2023年8月17日放送
カンブリア宮殿
「敬護の精神で全面サポート 頼れるスーパー介護施設!」より
今回の主役は「リハプライム株式会社」です。
核となる事業が「コンパスウォーク」という歩行のリハビリに特化したデイサービスです。
※デイサービス:高齢者の方が日帰りでリハビリや食事を受けられるサービス
コンパスウォークは、高齢者に寄り添い、敬うことを大事にしているデイサービスです。
本記事では、番組本編の内容だけではなく、「テレ東ビズ」の未公開インタビューの内容も含めて、人気の介護施設の秘密と創業者の思いに迫ります。
スーパー介護施設と呼ばれるコンパスウォークとは?
コンパスウォークでは、利用者のモチベーションづくりとして、「一番やりたいこと」をサポートすることに力を入れており、「孫と一緒にどこへ行こう」をコンセプトとしています。例えば、「自分で買い物したい」に応えるために、隣に利用者専用のスーパーマーケットが併設されています。
娘息子代行サービス
利用者の家にスタッフが訪問し、息子に頼むようなエアコン掃除や庭掃除などをスタッフが代行するサービスです。いつも通っているデイサービスのスタッフで安心感があることから、人気のサービスです。
働いているスタッフも、介護の仕事とは思っておらず、住み慣れた地域で生活していくためのサービスの一つだと考えています。
リハプライムは、デイサービスのほかにもパン屋や美容院を運営し、高齢者が過ごしやすい地域づくりを進めています。
全国に166店舗に規模を拡大し、2023年は20億円の売上を見込んでいます。
コンパスウォークは、「敬護」の精神を理念として掲げています。これは、ただ単に介護やリハビリ補助をやるのではなく、人生の大先輩が意欲的に生活できるために、利用者を敬う精神であり、「敬うこと」と「介護」をかけて作られた言葉です。
この「敬護」は、創業者の小池社長の経験から生まれたものでした。異業種から起業した小池社長の経緯はどのようなものでしょうか。
介護施設ができるまで
小池社長は、バリアフリーの街をつくりたいと願い、新卒で野村不動産に入社しました。しかし、働いている中で、都市設計の部署に配属されることはなく、フィットネス事業の子会社に誘われることになりました。もともと段差ひとつないバリアフリーな街を作りたいという夢をもっていましたが、「そんな街を作ることはできない。段差を超えることができる身体をつくることが今は重要だ。」とフィットネス事業の人の言葉に共感し、その子会社に行くことを決めました(当時30歳)。そして、2005年(当時40歳)には、その会社の執行役員までになりました。
転機となったのは、2010年(当時45歳)。両親が同じ週に立て続けに倒れてしまいました。小池社長は、両親を預けられる介護施設を近所で探し回りました。
そこで、小池社長は衝撃を受けたのです。訪れた介護施設で、スタッフが高齢者の方を「ちゃん」づけで呼んだり、頭をなでたりして可愛がっていることが、自分の親がやられると思うとどうにも許せないという感情が出たのです。自分の親には、敬意をもって接してほしいと思ったのです。
両親が倒れても、大好きなフィットネス事業をやめる予定はなかったのですが、高齢者を敬っている介護施設がないことが衝撃的過ぎて、自分で小さなリハビリ施設をつくろうと決意しました。
スーパー介護施設への変貌
2011年、4人で1号店をオープンし、当初から高齢者を親のように敬う「敬護」の理念を掲げていました。
しかし、当初は利用者が増えず、開店数か月ではやくも倒産の危機に陥りました。
そこで転機が訪れました。
娘を施設内で遊ばせていた日、喉が乾いたと言う娘に、施設の茶色いコップで飲み物を入れようとしたときに、このコップは本当にきれいなのか、コーヒーか水か分からないのでは。と疑問に感じました。そして、自分が汚いと思っているようなコップを利用者に提供していたということにハッとし、知らないうちに自分が経営理念をおろそかにしてしまっていたと気づきました。 そんな施設が嫌ではじめたのに、自分の親も使っている施設で、自分の親も人の親も考えられない自分に涙がとまりませんでした。
それからは、茶色のコップを白にし、衛生管理を徹底するようになりました。家から持ってきていたペンはすべて新品にし、部屋を隅々まできれいにした。また、スタッフによるお楽しみ会やアニバーサリー動画作成など利用者が楽しめる考えつくものはすべてやりました。すると、口コミが広がり、3か月で大人気なデイサービスに変貌しました。
地域で人気のデイサービスになったものの、新たな落とし穴が出てきました。
創業二年目の新入社員に「こんなブラック企業で勤められません。人が足りなくて有休がとれない。」と言われたました。実際に4人で回していて1人でもいなくなると回らなくなる状況であり、新たに人を雇うお金の余裕もありませんでした。
小池社長は、考えた末、もう1店舗を増やせば、2店舗分の利益でもう一人増やせるのではと思いつきました。どんどん進めて、1号店の近くに2号店をオープンすると、大ブレークして3か月で黒字化することができました。1店舗目がうまくいった理由である清潔にすることなどを全てあてはめたから2店舗目はすんなりうまくいったと小池社長は語っています。
「敬護」の精神を育てる研修とは?
小池社長が、力を入れているのは社員研修です。社員全員に「敬護」の精神をもってもらうことが重要だと考えており、「敬護」のベースは「自分の親を大事にすること」としています。例えば、入社5年目に課せられる研修として、親と旅行に行く「恩返し研修」があります。費用は会社負担で、1人3万円の高級ホテルに宿泊したりすることができます。
「親が元気なうちは遠慮して旅行には行かない、そして病気になると一層行けなくなるので、親と旅行しない流れがどこかある。」と小池社長は感じています。旅行にも行かせてくれるこんな会社で働いていると誇らしく思っている子供を親にも見せることが、親の喜びだと考えています。実際、社長自身も、50店舗拡大するときでさえも母親は心配しており、「いい社長に出合えた、この仕事をして良かった。」と伝えると、初めて「そうか、よかったね」と爽やかに言われた経験がありました。そのことから、自分の幸せが親の幸せであることに気づき、親の幸せのためにも社員の幸せが研修の最重要のコアだと話しています。
他にも、リハプライムは、社員の独立支援制度という面白い取り組みをしています。資金調達や物件選びなどをサポートし、自分自身のコンパスウォーク店舗をもってもらう制度になります。ただし、この制度には「親が住む町に出店する」という条件があります。あくまでも親への恩返し、親を大切にする、社長の信念が詰まっている制度になります。これまで静岡や和歌山、長崎で3人が独立し、今後も支援を進めていく予定です。
今回学んだこと
「親を大切にすること」
私は、親には愛をもって育てられたと思っています。しかし、そんな両親に対して、自分は愛をもって大切にしているのだろうか。と本編を見ながら思いました。自分の人生だからと言って、親の意見を聞かずに行動してきたこともありました。ただ、親に人生をかけて育ててもらったことも確かです。今回はビジネス観点で学んだことというよりは、人生として大切なことを学んだ気がします。
小池社長も話していましたが、親が元気なうちに旅行にでも連れて行こうと思いました。
村上龍「ひまわりのように」
2010年1週間担いで親が二人とも倒れ、介護施設を探し回ったが、ちゃん付け。これは自分で作るしかない。
賛同した3名のスタッフとオープンしたが、翌年ブラックな会社だと新入社員に言われる。店舗には4人が最低限、そこで2店舗目を増やす。利益を得ることでスタッフを大切にする。直訴した新入社員は今では高い地位に。
ひまわりは太陽に向かって咲く。全員が太陽である理念にむかって仕事に取り組んでいく。